ここではアメリカ株式投資、高配当投資に興味のある方向けに
アメリカの高配当ETFを各種ご紹介します。
ETFとは株式市場に上場している投資信託です。
手数料が低く簡単に分散投資が可能です。
詳しくは記事:ETFって何? 投資信託と違い、メリット&デメリットは?【初心者向け解説】を参照ください。
配当は必ずしも高ければよいわけではありませんが、やはり現金還元を受け取れるのは大きなメリットです。配当についての考え方は 配当の考え方 - 配当利回りは高い方がいい?無配株の方がいい?-をどうぞ。
それではアメリカ市場でどういった高配当ETFがあるのか順番に見ていきましょう。
ここでは一般的なアメリカ株、債券、リートから、少しマニアックな優先株、MLP、BDC銘柄をピックアップ。是非高配当投資の参考にしてみてください。
*以後データは2021年12月30日現在のものです
① 米国 高配当株のETF
まずは高配当株のETFです。一番メジャーな銘柄になります。
株の配当利回りはまちまちです。
配当を全く出さない企業もあれば、4%, 5%と高い配当を出す企業もいます。
簡単に言ってしまうと「若くてまだこれから事業をどんどん拡大する」ような企業は無配傾向にあり、「歴史がある大企業。業績が安定している」という企業は高い配当を出す傾向にあります。Appleは長らく無配でしたが、現在は1%ほど出しています。
高配当株ETFとは数ある株の中から高配当株だけを集めたETFです。
構成銘柄は比較的規模が大きく古めの大御所銘柄が多いです。
その為安く買って高く売ることで得られるキャピタルゲインは望みにくい側面があります。
代表的な銘柄は下記です。
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 | 銘柄数 |
SPYD | SPDR S&P 500 高配当株式ETF | 3.91% | 0.07% | $ 5.2Billion | 80 |
HDV | iシェアーズ 米国高配当株ETF | 3.86% | 0.08% | $ 7.4Billion | 75 |
VYM | バンガード 米国高配当株式 ETF | 2.80% | 0.06% | $ 42.4Billion | 414 |
青:VYM 紫:SPYD ピンク:HDV
配当が一番高いのがSPYD、過去5年の株価パフォーマンスがいいのはVYMです。
コロナショックで株価的に一番苦しんだのがSPYDですね。
すべて高配当株への分散投資をしたETFですが、組み込み銘柄の数や比率が異なります。VYMについては詳しくは「アメリカ高配当ETF: 【 VYM 】とは? 株価、配当、構成銘柄まとめ」も参照ください。VOO, SPYD, HDVの過去のトータルパフォーマンス比較ものせています。
私は実際VYMを長期保有しており、含み益もでており、配当も毎年受け取っています。実績はこちら
VYMを選んだ理由は過去のパフォーマンスと安い手数料です。
② 米国 高配当債権のETF
債権の中にも高配当な銘柄があります。
高配当な債権に分散投資をするのが高配当債権ETFです。
債権とはお金を一定期間貸すことで利息をもらう商品で国が発行する国債と企業が発行する社債があります。債券系のETFは毎月分配金を出すものが多くこれに魅力を感じる人もいます。
高配当債権はハイイールド債(ハイ=高い、イールド=利回り)とも呼ばれ、格付けが低く債権であるにもかかわらず元本割れのリスクがあることから配当が高くなっています。
構成銘柄の多くは格付けBB以下の低い銘柄です。
投資適格はBBB以上ですので基本的に投資不適格銘柄といことになります。
ETFなので各銘柄の比率は2%弱なので分散は効いていますが、JNKのティッカーフが示す通りジャンクの集まりだということは認識しておく必要があります。
代表的な銘柄
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 | 組み込み |
JNK | SPDR ブルームバーグ・バークレイズ・ ハイ・イールド債券ETF | 4.47% | 0.40% | $ 9.5 Billion | アメリカ ジャンク債 |
HYG | iシェアーズ iBoxx米ドル建て ハイイールド社債ETF | 4.44% | 0.48% | $ 20.0 Billion | アメリカ ジャンク債 |
EMB | iシェアーズ J.P.モルガン・ 米ドル建てエマージング・マーケット 債券 ETF | 3.85% | 0.39% | $ 19.7 Billion | 新興国 国債 |
青:JNK 紫:EMB ピンク:HYG
JNKとHYGはアメリカ社債のETF、EMBは新興国の国債のETFです。
新興国の国債とは例えばロシア、クウェート、ウルグアイ、カタールといった国になります。
手数料は0.5%未満ですが高配当株ETFよりは高いですね。
過去5年での株価のパフォーマンスはJNK -0.5%, HYG +0.8%, EMB -1.2%です。
③高配当 株と高配当 債権の混合 ETF
高配当株と高配当債権を組み合わせたETFも存在します。
一つ紹介します。
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 |
YYY | アンプリファイ ハイインカムETF | 8.87% | 2.45% |
YYYは株と債権のハイブリッドETFです。
高配当株12%、高配当債権88%の組み込みです。
価格の過去5年のパフォーマンスは – 10% 。
他の高配当銘柄もそうですが、コロナショックでの落ち込みがすごいですね。
配当は8.87%と超高配当ですが、経費が2%越えという高さが玉に傷です。
④ 米国 高配当のREIT ETF
高配当銘柄の筆頭のREITのETFも存在します。
REITとは Real Estate Investment Trustの略です。不動産投への分散投資が可能です。
簡単にいうと(あくまでイメージとですが)あなたが部分的にオーナーになって家賃収入を得るという感じです。
REITは利益の90%以上を配当にすることで税の免除を受けています。これが高配当を実現している理由です。
代表的な銘柄
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 |
RWR | SPDR ダウ・ジョーンズ REIT ETF | 3.26% | 0.25% | $ 1.83 Billion |
USRT | iシェアーズ コア米国リート ETF | 2.47% | 0.08% | $ 2.13 Billion |
IYR | iシェアーズ 米国不動産ETF | 1.88% | 0.41% | $ 5.48 Billion |
XLRE | 不動産セレクト・セクター SPDRファンド | 3.04% | 0.12% | $ 3.39 Billion |
青:RWR ピンク:USRT 紫:IYR 緑:XLRE
USRTは手数料も低く良いのですが、現状日本からの直接投資はできないようです。過去5年のパフォーマンスはXLRE +63%, IYR + 48%, USRT +41 %, RWR +35%です。
コロナショック後、きれいな右肩上がりな推移です。
価格推移は一貫してXLREがいいですね。配当も3%でていますので、過去パフォーマンスを見る限りはXLREがよさそうです。
ちなみに私はシンガポールのリートに投資をしています。
アメリカリート以上に高配当ですので、興味ある方は記事「世界トップクラスの高配当シンガポールREITのETF」を参照ください。
⑤米国 優先株の高配当ETF
株の一種ですが、普通の株と少し性質の異なる「優先株」という株が存在します。
優先株とは通常の株に比べて優先的に配当を受け取ることができる代わりに決議権を持たないという株です。
ある企業の株式を保有するということはその企業の一部を保有することです。(株式、株式投資って何? 初心者向けにわかりやすく解説)しかし優先株は会社の所有権は持てません。株式総会へも行くことはありません。その代わり例えば企業が倒産した際に普通の株式を買っている株主より優先してお金を返してもらえます。
少し債権に近い感覚のある株になります。権利が限定される分、配当は多めにもらえます。
代表的な優先株ETF
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 |
PFF | iシェアーズ 優先株式 & インカム証券 ETF | 4.47% | 0.46% | $ 19.8 Billion |
PFFD | Global X US 優先株式 ETF | 5.34% | 0.23% | $ 1.3 Billion |
青:PFF ピンク:PFFD
過去5年でのパフォーマンスはPFFが +5.05%、PFFDが +6.61% です。
王道はPFFですが、近年はPFFDの株価推移の方がよいですね。配当も高く、手数料が安いのもPFFDです。ただ時価総額はPFFの方大きいので流動性は高いです。
⑥ 米国 MLPの 高配当 ETF
MLPは Master Limited Partnership の略です。
原油や天然ガスのパイプラインや製油施設などに共同で投資するものです。
例えば、個人で太陽光に投資している方もいると思います。少量の太陽光パネルであれば購入できますが、大規模になると自分のお金ではできないのでお金を集める必要があります。そこで出資者を集めてお金を集めて投資、リターンを出資者に返します。こんなイメージです。
対象が莫大な資金が必要なパイプラインや精油施設ということです。
出資者に一定割合以上の高い配当率で還元することで法人税がかからな仕組みになっています。ある対象に投資をして、その収益を出資者で山分け、高配当することによって免税ということでリートにも近いイメージですね。
銘柄2つご紹介。
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 |
AMLP | Alerian MLP | 7.75% | 0.90% | $ 5.75 Billion |
AMJ | JPMorgan Alerian MLP | 6.90% | 0.85% | $ 2.33 Billion |
以前ZMLPという銘柄がありましたが、2020年に上場廃止になっています。
青:AMLP ピンク:AMJ
過去5年でAMLP -49%、AMJ -43%という株価推移です。
以前は配当が10%を超えていたのですが、現在は7%ほど。価格が5年で当初価格の半分近く落ち込んでしまうのは中々投資しにくいですね。
⑦米国 高配当 BDC銘柄
BDCとはBusiness Development Companyの略です。
BDCは中小企業や新興企業など社会的信用がそこまで高くない企業に融資することで中小企業を財政面や経営面からサポートする企業です。銀行ではありませんが、イメージとしては地銀、信用金庫に近いかと思います。
BDC銘柄はREITと同じように利益の90%以上を配当にすることで税の免除を受けています。そして融資先の企業は信用格付けも低い企業になりますので高配当となります。
BDCのETFもBIZD、ALTYなどがありますが、日本からの売買は取扱がかなり限定されていますので、ここでは個別のBDC銘柄を取りあげます。
BDCは法律でも分散投資(融資)が義務付けられておりその意味では投資先は分散されておりETFに似た性格と言えなくもないです。
代表的なBDC銘柄
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 時価総額 |
ARCC | エイリス・キャピタル | 7.90% | $ 9.62 Billion |
PSEC | プロスペクト・キャピタル | 8.41% | $ 3.31Billion |
MAIN | メイン・ストリート・キャピタル | 5.81% | $ 3.09 Billion |
青:ARCC ピンク:PSEC 紫:MAIN
コロナショックで価格が暴落しましたがかなり戻ってきています。配当は8%ほどと高水準です。
5年でのパフォーマンスはARCC + 26%, PSEC +2.5%, MAIN + 20%です。
ちなみに私はARCCを長期保有しています。コロナで暴落したところを買いました。それから株価もあがってきましたし配当も8%ほどですので満足しています。
⑧カバードコールETF
カバードコールとはオプション取引を利用した投資手法のひとつで、株を保有しながら、その株のコールオプションの売りポジションをとることを言います。
QYLDを例にとると、QQQと同じようにナスダック100指数と同じ比率で株を持ちます。これらの株をコールオプション(予め決められた価格(行使価格)で予め決められた期間(行使期間)に買う権利)を売ることで、オプション料をもらうことができます。
例えば、ある株を$100で買える権利を売ることで、オプション料(手数料)を$5を得るという感じです。
その株が$120にあがった場合、$100で買える権利を買った相手は 120-100-5=$15儲かり、売った方は$5儲かることになります。
逆に$80に下がった場合、 $100で買える権利を買った相手は$20損することになるので権利を行使しません。 すると売る側が売りになりますが、オプション料は$5入っていきまので、通常であれば$100-$80 = -$20の損をするとこと、-$15のダメージで済むということになります。
説明が長くなりましたが、カバードコールETFは、こういった仕組みを使って、オプション料を稼ぎこれを配当として還元する設計になっています。
カバードコールETFはうまくいくには、投資している指数(S&P500やNasdaq)が活況(みんなが欲しがる)で株価が上昇する必要があります。その中で指数の株価上昇は無視してオプション料を稼ぐという性質です。
現在非常に高配当ですが、指数が右肩下がりになってくると減配は逃れられないと思いますので注意が必要です。
代表的なカバードコールETF
ティッカー | 名称 | 配当利回り | 経費率 | 時価総額 |
QYLD | Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF | 11.80% | 0.60% | $ 3.35 Billion |
XYLD | Global X S&P 500 Covered Call ETF | 9.58% | 0.60% | $ 0.33 Billion |
青:QYLD ピンク:XYLD
QYLDはNasdaq、XYLDはS&P500に連動するETFです。
完全に配当ねらいの銘柄ですが、過去5年の株価推移はQYLDが+20%、XYLDは +0.4%とマイナスにはなっていません。
まとめ
青:VOO(比較のため)/ ピンク:VYM / 水色:JNK / 紫:YYY / オレンジ:RWR / ベージュ:PFF / エメラルド:AMLP / 赤:ARCC / 緑:QYLD
こちらは今回紹介した8つの高配当区分から1銘柄ずつメイン銘柄の過去5年の価格推移を比較したものになります。基準値としてS&P500のインデックVOOも入れています。
配当を考慮しなくてはいけないのでこのチャートだけで判断はできませんが、VOOが +110%に対して今回紹介した高配当ETFは 高配当株VYMが+48%、BDC銘柄のARCCが+26%、リートのRWRが+29%その他は一桁の成長。株と債権のハイブリッドETFのYYYは-10%、AMLPは大きく値を下げ-49%です。
高配当は不労収入を簡単につくれるので、私も大好きですが、高配当には高配当の理由があります。
株の場合はキャピタルゲインの期待度が限定的、債権は信用不安があります。REIT, MLP, BDCは利益のほとんどを配当に割り当てるという仕組みを持っていますがBDCの裏には信用度の低い企業がいます。MLPは専門性が高い気がします。
こういった高配当の背景を理解した上で、投資をしたいところです。
高配当株はトータルパフォーマンスでは市場平均に満たない場合が多いですが、持ち株数を減らすことなく利確ができるというメリットもありますし、モチベーションにもなります。
高配当に興味のある方は、是非今回紹介した銘柄含めチェックしてみてください!
それでは、また。
コメント
こんにちは、ぽちゃさん。タイガーブローカーメインでやってます。
シンガポールからアメリカ株の配当を受ける場合、両国には租税条約が結ばれていないため、配当課税30%ではありませんでしたか?10万ドルの4%は4000ドルですが、ここから3割だから、実質2.8%!
キャピタルゲイン課税はありませんが、配当まで無税の場合、アメリカの生まれながらの金持ちは、シンガポールに拠点移しちゃいますよね。ジムロジャースは相続対策なのかもしれませんが、よく来たなと思います。シンガポールで見る欧米系の金持ちは、配当課税ゼロの旧英国連邦の人々がほとんどなのかもしれませんね。
なので、アメリカ株の場合は、配当を出さないグーグルみたいな銘柄の方がいいように思います。
また、米国株はいかんせん扱い量が多くて為替手数料が安いといっても、購入時の変換と引き出し時の変換と2度の変換が累積するとバカになりませんし、売買手数料も累積するとかなりのもの。
配当課税やこれらの見えにくい経費も含めて実質利回りを出してみると、涙目になると思いますよ!
頻繁に取引するほど証券会社が儲かるし、高配当銘柄を買うだけ、アメリカ政府も、配当のたびに手数料をとる証券会社が潤うし…ということで、彼らに儲けさせない方向で投資を続けると、実質利回りも爆上がりするのでは?と思いますが、いかがでしょうか。
結論として、不活発なSGXはつまらないですが、中毒性の高いマネーゲーム的要素を無視してSGXに集中投資した方が、15年先の実質リターンはいいかもしれませんね。
丁寧なコメントありがとうございます!
勉強になります。
おっしゃるとおりシンガポールからアメリカ株への投資の場合配当課税30%かかります。
アメリカ株に投資なら無配株にキャピタルゲインねらいの方合理的ではあると思います。
為替変換含む売買手数料たしかに累積すると馬鹿にならないですね、、このあたりは自分ももっとシビアに見ていかないとなと思っています。
シンガポールからのアメリカ株は頻繁に売買しずらいというのは間違いないですね。
パフォーマンス、今後の投資期間、シンガポール・日本での生活期間などを考えアメリカ高配当株への投資は熟考したいと思います。
SGXへの集中投資面白いかも知れませんね。シンガポール在住中はシンガポール株やリートへの投資が手数料、税金的観点からは正解かもしれません。