シンガポールのリートに投資をしたけど、どうやって選べばいいの?
どのあたりを見て選べばいいのか、選定ポイントを知りたい。
ここではシンガポール在住の方向けに「シンガポールリートを選ぶにあたり確認しておきたい8つのチェックポイント」について解説します。
シンガポールリートは全部で43銘柄。その中から最適な銘柄を選ぶのは至難の業です。
しかし、だからといって何の根拠もなしに投資するのは危険です。自分なりの視点をもって投資することが非常に重要です。
ここではリート選定に役立つ8つの視点を解説します。投資に馴染みのない方でも理解できる内容です。各リートの分析方法、参考となる指標について理解が深まりますので、是非リート選定の参考としてみてください。
シンガポールリートの選び方・分析方法 8つのチェックポイント
早速シンガポールリート選定の際の8つのポイントですが、下記のようになります。
( )内の数値は私が考える投資対象ラインの参考値です。
・ カテゴリーとポートフォリオの確認
・ 時価総額 (SGD 1 Billion以上 (約800億円以上))
・ 売上と利益が伸びているか
・ 物件利回り( 4 〜 8% )
・ 配当利回り(5%程度)
・ ギアリング比率 (40%以下)
・ PBR ( 0.8 ~ 1.5 )
・ 値動き
それでは一つずつ解説していきます。
① カテゴリーとポートフォリオの確認
まずはどういった物件に投資をしているのかをみていきます。
・リートのカテゴリー
・物件のポートフォリオ
・分散されているか
をざっとみていきます。
カテゴリー
シンガポールのリートは2022年6月時点で全部で約43銘柄あり、下記のようなカテゴリーに分かれています。 簡単な特性とともにご紹介します。
カテゴリー | 特性 |
オフィス系 (オフィスビル等) | 景気に影響を受け、価格変動もそれなりにあり 立地重要 |
商業系 (ショッピングモール等) | 同上 |
ホスピタリティー系 (ホテル、リゾート等) | 比較的安定しているが価格も上がりにくい |
ヘルスケア系 (病院や老人ホーム) | 同上 |
インダストリアル系 (軽工業、産業系、物流等) | 比較的安定している 分散されているか確認すること |
複合型 | 複数のカテゴリーの物件をもつリート |
個々のリートによって株価推移は異なりますが、ざっくりのイメージとしては
株価上昇でのキャピタルゲインを多少狙うのであればオフィス、商業系。
ある程度安定を求めるならホスピタリティ、ヘルケア系。
上記の中間が物流系、産業系。
といった感じになります。
尚、カテゴリーを選ぶ際に仕事に関連のある業界や興味があるカテゴリーのリートに投資することのは肌感覚があったり勉強意欲が湧くのでおすすめです。
物件のポートフォリオ
投資するリートがどんな不動産を取り扱っているのか、物件のポートフォリオは必ず確認したいポイントです。
各リートの不動産ポートフォリオは各リートのウェブサイトで確認できます。
仮にCapitaland Integrated Trustをのポートフォリオを調べたいときは「 Capitaland integrated Trust 」でぐぐっってPortofolioページを見てみてください。
下記のような画面になります。
Capitalandのリートの場合、Capitaspring, Funan, Asia Square Tower 2, BUGIS+, IMMなど有名な商業ビルやモールがポートフォリオに入っています。
オフィス系、リテール(商業)系など様々なタイプの不動産を抱えた複合リートであること、大型の知名度高い不動産を複数抱えていることがわかります。
これららの物件がしっかりと利益を上げるかどうかがリート投資での最重要事項です。
オフィスビルやモールですと馴染みがあるところも多く、「あのモールはいつも人で賑わってるな、」とか「最近できたオフィスビル、綺麗だけどなかなかテナント埋まらないな、、」などと感じることも多いかと思います。そういった感覚はわりと大事で、自分が気になるリートの物件はいくつか実際に行ってみると学びもあると思います。
シンガポールリートの多くは海外物件も扱っています。中国やインドネシアがポートフォリオに入ってくると配当も高くなる傾向にありますが、リスクも伴うことになりますので注意が必要です。
個人的にはシンガポールの物件比率が高いリートが好きですが、「シンガポールリートに投資していると思っていたのに、シンガポール外の不動産に投資していた!」ということにもなりかねないのでポートフォリオは確認しましょう。
十分、分散されているか
投資において投資先を分散することは重要です。意図的に集中投資をする場合は別ですが、一つのカゴに卵を盛らないのが定石です。
分散投資の方法は、アセットクラスの分散、時間の分散、銘柄分散等様々ですが、自分の投資先がどのくらい分散されているのかはチェックしておきたいポイントです。
時価総額が大きなリートは大抵十分な分散投資がなされていて値動きも比較的安定します。逆に投資先が少ないとポートフォリオを構成するそれぞれの物件の影響力が大きくなるため値動きが激しくなりやすいです。
物件数のほかにも商業、オフィスに特化したリートなのか、先ほどのCapitalandの例のように複数のカテゴリーを保有しているのか、海外物件を盛り込んでいるかなどによっても分散度合いを図ることが可能です。
自分の興味あるリートが、どのカテゴリーに、どの国にどのくらいの物件を保有しているのか各リートのポートフォリオで確認してみてください。
特に物流、産業系は一つの倉庫を一つの企業に貸している場合があります。
例えば倉庫を10個もっていてそのうちの1つの倉庫から企業が抜けてしまったら一時的に収入が減ってしまいます。一時的にリートの収入に10%のインパクトがあります。ただ、これが100個持っていれば1%の影響で済みます。
オフィスやモールは小分けして貸しているので一つのオフィスビルやモール内でもすでに分散がされていますが、物流系は物件内での分散率は低めですので、確認しておいたほうが安心です。
② 時価総額 Market Cap
シンガポールリートを選ぶ際に確認したい2つめのポイントはリートのサイズ、時価総額です。
シンガポールリートの時価総額は約SGD 0.3 – 12Billion ( 240~1.1兆円 )です。
基本的に時価総額は大きいほうが価格が安定します。
売買の取引数が増えて需要と供給がちゃんと働くためです。
時価総額が小さいほうが値動きはあるかもしれませんが、リートは投資商品としてある程度安定していることが魅力の一つだと思いますので時価総額は大きいほうがよいと考えます。
個人的な目安としてはSGD 1 Billion 以上 ( 約800億円 ) あれば十分かと思います。
下記は時価総額トップ10リートです。
タイプ | REITS | 時価総額 S$BIL | 資産総額 S$BIL | 投資先国 |
複合型 | CapitaLand Integrated Commercial Trust | 12.8 | 22.5 | Singapore, Germany |
複合型 | Ascendas REIT | 11.6 | 16.3 | Singapore, Australia, UK, USA |
インダストリアル | Mapletree Logistics Trust | 7.9 | 11.5 | Singapore, Australia, China, Hong Kong, India, Japan, Vietnam, Malaysia, South Korea |
インダストリアル | Mapletree Industrial Trust | 6.7 | 8.6 | Singapore, USA |
複合型 | Mapletree Commercial Trust | 6 | 8.8 | Singapore |
複合型 | Frasers Logistics & Commercial Trust | 5.1 | 7.3 | Singapore, Australia, Germany, The Netherlands, UK |
データセンター | Keppel DC REIT | 4.9 | 3.3 | Singapore, Australia, Germany, UK, Italy, Malaysia, The Netherlands, Ireland |
複合型 | Suntec REIT | 4.4 | 12.2 | Singapore, Australia |
オフィス | Keppel REIT | 4.1 | 8.9 | Singapore, Australia, South Korea |
商業 | Frasers Centrepoint Trust | 4.1 | 6.1 | Singapore |
データソース:reitas
各リートの時価総額の確認はreitasというサイトに一覧があり便利です。リアルタイムの時価総額はYahoo FInanceで確認できます。
③ 売上と利益 Revenue & NPI
シンガポールのリートは配当によるインカムゲインを狙うスタイルが多いので長期保有される方が多いと思います。売上や利益が長期的に安定的に伸びているかも確認したいポイントです。
株のように製品やサービスを販売しているわけではなく、売上の伸びは、物件の購入、買収によって伸びていきます。過去3〜5年ほどをみて売上が増えているか、収益性に問題ないかを確認しましょう。
売上や利益のデータは各リートのホームページで確認できますが、Yahoo Finance (US版)やMorning Star (US版) のサイトも活用すると便利です。
過去3年のデータはYahoo Financeで簡単に確認可能です。
Morning Starは過去10年のデータ一覧が見れて便利ですが、期がずれているのか数字が実際の数字と少しずれている気がしますので、まずはYahoo Financeでの確認で良いかと思います。Morning Starはこれまでの流れを知るには有用です。
因みに売上はRevenueと表記されます。
利益は通常営業利益を見ており、物件の家賃収入から必要費用を引いた額になりますが、シンガポールのサイトではNPI ( Net Property Income )と表記されることが多いです。
アメリカのサイトですと、Gross ProfitやOperating Incomeと表記されたりします。
④ 物件利回り Property Yield
物件の利回りは非常に重要です。
リートは不動産投資ですので、それぞれの物件の利回りが収益性を決めます。
個人で例えばマンション投資をする際に利回りは一番気になるポイントかと思いますが、それと同じです。
少し混乱する方もいるかもしれませんが、Property Yield=物件利回りは、リートの利回り(配当)とは別です。リートの利回りは市場での売り買いによって決まりますが、物件利回りはあくまで保有物件の利回りです。保有している物件の稼ぐ力といってもいいと思います。
個人的な目安は4〜8%ほどですが、利回りはカテゴリーによって特性もあるので一概には言えないところもあります。
例えばオフィス系は一般的に物件の利回りは低めです。しかしだからと言ってオフィス系が悪いかというとそういうわけではありません。
物件利回りの使い方としては、例えば同じカテゴリーの似たリートがあった際に物件利回りを比較してみたり、実際の配当利回りとの関連をみてみるといった使い方ができます。
物件利回りが著しく低いリートはまず避けておいた方が賢明です。
物件利回りはFifth Person というサイトで簡単に調べることができます。
⑤ 配当利回り
リートの旨味は配当にあります。
配当が高い株やリートが必ずしも良いとは限りませんが、リートはインカムゲインを狙う商品ですので、配当利回りはある程度高くないと投資の意味が薄れます。
シンガポールのリートは3 ~ 6%くらいのものが多いですが(日本のリートですと3%前後が主)、3%ほどですとアメリカの高配当株でも狙えるレベルですので、個人的にシンガポールリートで狙いたいのは5%以上です。
各リートの配当利回りはFifth Person で一覧で確認できます。Distribution Yieldの欄が配当利回りになります。
Fifthpersonは常に最新のデータと同期をしているようですが、精度としてはYahooFinanceの方が高いかと思いますので、私は実際に気になる銘柄が2、3でてきたらYahooFiananceで詳細確認しています。
⑥ ギアリング比率 Gearing Ratio
ギアリング比率はどれだけ借金をして(レバレッジをかけて)経営しているかの指標です。
レバレッジ比率、債権比率と呼ばれたりもします。LVT(Loan to Value)も類似指標です。
個人的にはギアリング率は40%以下が良いと考えています。
ギアリング率40%とは、例えば 1 Million SGDの家を買うのに、自己資金 600K SGDと銀行からの借り入れ400K SGDという状況です。
リートはリートを発行することでお金を集める他に銀行から借り入れをしています。銀行の借り入れが大きければ大きいほど、金利の支払いも大きくなりますし何かあったときにお金がなくなり首が回らなくなる恐れがあります。
特にリートには利益の90%以上を配当として支払わなければいけない90%ルールがあります。
ですので、利益を内部留保できません。構造的にキャッシュが手元に残りにくい仕組みになっています。
リートがうまくいかなくなる典型はこのキャッシュフロー問題にあります。
もちろん90%ルールがある方こその高配当が実現できているので、それは恩恵として受け取れば良いのですが、ギアリング率には注意をしておきたいです。
シンガポールのリートはギアリング率の上限が45%と規定で決まっています。
ですので過度の借金体制にはなり得ません。これは安心です。ただ上限マックスの45%まで借り入れているよりは40%以下くらいの方が個人的には安心ができます。
ギアリング率はFifth Person で一覧で確認できます。
⑦ PBR
PBRとは Price to Book Ratio 、日本語で「 株価純資産倍率 」です。
リートの価格が純資産(1ユニットあたり)の何倍かを計算することで、現在のリート価格が割安かどうかを見るのに使えます。
詳しくは ↓ こちらの記事をどうぞ
細かい説明を省くとPBRは 1 だとフェアバリュー適正価格、1以上だと割高、1以下だと割安と判断されます。
しかしだからと言ってPBRが低ければ低いほど良いかというと、そうでもないのが難しいところです。
なぜなら割安だと判断しても実は収益性や成長性が悪く人気がないだけで、価格が上がらないどころかずっとじりじり下がっていく可能性もあるからです。
使い方としてはこれまでのチェックポイントで探した優良リートの価格推移をPBRとともに見ながら、良いタイミング(割安と考えれられるタイミング)で購入するといった感じです。
個人的には、できれば1.2 以下くらいで買いたいな、と考えています。
PBRもFifth Person で一覧で確認できます。Price toBookの欄の数値になります。
⑧ 過去の値動き
言わずもがなですが、過去の値動きも確認ポイントです。
配当が高くとも価格が右肩さがりでは資産は増えません。むしろ減ってしまいます。
これまでの価格推移に加え、他のリートと比べてどうなのか、値動きの幅(ボラティリティ)が大きいかなどを確認したいところです。
ここでは時価総額5位までのリートの株価5年の推移を紹介します。
過去の話ですで未来のことはわかりませんが、私は参考にしています。
まずは過去5年の株価推移(2017/6-2022/6)
データソース:Yahoo Finance
時価総額トップ5の過去5年の価格推移では
一番成績がいいのはMapletree Logisticで+39%
一番成績の悪いのがAscendasで5%ほどとなっています。
さらに遡り過去10年の株価推移(2012/6 – 2022/6)
データソース:Yahoo Finance
時価総額トップ5の過去10年の価格推移では
一番成績がいいのはMapletree Industrialで+104%
一番成績の悪いのがCapitaland Integratedで +15%ほどとなっています。
同じリートとはいえ株価の推移にはかなりの開きがあります。
安定的に伸びているものを買いたいですね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
私はシンガポールに来て、いざリートに投資しようと思った際「何を買ってよいか」「どういったところをみればよいのか」と結構迷いましたので、色々と勉強をしました。
本情報が少しでもシンガポールのリート選定の参考になればとてもうれしいです。
各物件の収益性は各リートのウェブサイトを確認できますが、オフィスやモールであれば実際自分で行ってみて雰囲気やどんなテナントが入っているかなどを確認することも有益で、リート投資を楽しむ秘訣だと思っています。
シンガポールは狭い国ですのでオフィス系やモール系であれば知っている物件が多いと思います。愛着のある物件がポートフォリオに入っているリートを選ぶというのもよいと思います。愛着があれば変化にも気づきますので。
それでは、また。
尚、上記を考慮したおすすめリートも別記事で紹介していますので、こちらどうぞ。
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