株式投資を行う上で重要な指標の一つが金利です。
ここでは株式投資初心者向けに
「 金利 」について出来るだけわかりやすく解説をしていきます。
金利を理解することは経済、金融、資産運用のベースになりますので、株式投資をしてない方にもぜひ一読して 一緒に勉強できればと思います。
今回は金利の解説のその2です。
前回金利の基本的な考え方と身近な金利について触れました。
今回はもっとマクロな経済に関係し、投資にも役立つ
短期金利と長期金利について、
そして、それぞれがどのように経済全体に影響を及ぼしているのかを出来るだけわかりやすく解説していきます。
金利についての解説その1はこちら。まだ読まれていない人はこちらからどうぞ。
短期金利
短期金利とは、取引期間が1年未満(数日~数ヶ月程度)の金利のことです。
短期金利の代表は政策金利です。ここでは政策金利の説明だけ行います。
短期金利(政策金利)
貸し手:市中銀行
借り手:中央銀行(日本なら日銀)
金利は中央銀行が決める
日本の政策金利:- 0.1% (20201/3/17現在)
政策金利とは、中央銀行が一般の民間銀行等(市中銀行といいます)に貸し付ける際の金利のことです。中央銀行(日本で言えば日銀)の金融市場の調節手段として利用されます。
私たちが日々利用している市中銀行は日銀に口座を持っています。
日銀にお金を預けているのです。
日銀は市中銀行向けの預金金利を決めることができます。
日銀は儲ける為にこの金利を設定するのではなく、日本全体の経済、景気を安定させるために金利を操作します。この金利の操作を政策金利といいます。
短期金利が経済に与える影響
ではなぜ金利を操作することで経済を安定することができるのでしょうか?
2020年3月現在の政策金利を見てみましょう。
現在の政策金利は – 0.1%です。
マイナス金利ということは、市中銀行が日銀にお金を預けていると、通常は利子がつくところが逆に資金が減っていくという状況です。
市中銀行は放っておけば資金目減りするのでお金を低金利でも融資するなど市場にお金を流すことを考えます。
現在日本はデフレが続いており、ものが売れない状態です。
お金を使わないと経済がよくないので、日銀は市中銀行に市場にお金をもっと流すことを促し経済活性化を間接的に誘導しているのです。
このように市中銀行向けの金利を操作すると市中銀行の金利に影響します。
そして市中銀行の金利設定によって企業や個人がお金を借りやすくなったり、借りにくくなったりするのです。
このお金の借りやすさが、世の中の金回りに影響し経済そのものに影響を与えます。
ちなみに、短期金利をきめる会議は金融政策決定会合といい年8回行われます。(1,3,4,6,7,9,10,12月))
ここで発表される金利を確認することで今後の経済の流れを予測することができます。
短期金利が操作されるときは株価が大きく動く可能性があります。
日本だけでなく、現在世界で一番影響力を持っているのがアメリカですので、
アメリカの中央銀行FRBが設定する政策金利も大事な指標です。
長期金利
長期金利:金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利のことです。
新聞やテレビなどで報じられている長期金利は通常10年物国債の利回りを指しますので、ここでは10年物国債だけ説明します。
長期金利(10年物国債の利回り)
貸し手:個人や法人
借り手:国
新規発行国債の金利は国が決めるが、その後は市場
日本の長期金利:0.05%(2020/3/17現在)
償還金額:額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)
国債とは国が発行する債券です。
国は国債を発行することで購入者となる個人や法人に借金をして資金を集めます。
国債を買うということは国にある一定期間お金を貸して利息を受け取るということになります。期間は3年物、5年物、10年物があります。
日本の国債は毎月発行されており、新規発行時に条件(金利)が提示されて公募が行われています。
現時点での最新10年物国債の条件は10年預けて0.05%です。
とても低いのに変わりはありませんが、(10年物は景気変動しますので最低0.05%ですが)信頼性も民間銀行よりは高いですし、銀行の定期預金よりは少しはマシですね。
最近売れている山崎元さんの本「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」でも元本保証商品として国債の購入がおすすめされています。
個人でも買えますのでご興味ある方はこちらからどうぞ https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/
長期金利は経済の体温計
さて、国債は満期まで保有せずに途中解約して売ることもできます。
解約された国債は株式のように市場で売り買いされます。
市場で取引されるようになると国債の価格も需給によって変動します。そして価格の変動にあわせて利回り=金利も変動します。
そしてこの変動が長期金利そのものです。
この長期金利の動きが、銀行の定期預金や住宅ローンの固定金利に大きな影響を及ぼします。 現在の経済状況や今後の景気動向をみるのに大事な指標となります。
なぜなら長期金利は当初は政策金利の影響を受けながら、変動をするなかで現在の市場の需給と今後の景気見通しがみえてくるからです。
(その1でお話した10年お金を貸した際の話を思い出して下さい)
国債には3年も5年もありますが、10年物の国債の利回りを基準にするかというのも長期間になればなるほど短期金利の影響が減り、市場のインフレ期待値などの繁栄の余地が増えるからです。
市場の温度を測る為には長期物のほうが適切です。
例えば長期金利がずっと低い水準ということは将来のインフレ期待がとても低いことになります。
長期金利はあらゆる金利の大本といっていい指標となります。
ちなみに国債の価格と利回りの関係は株価と配当に似た表裏一体の関係です。
例えば
100万円分、金利1%の1年物国債を持っていたとします。
満期の1年後には101万円うけとれることになります。
償還金額と金利1%は約束されたもので固定されています。(株の配当のように業績によって調整が入るものではありません)
これを例えば途中解約して
100万円の国債の価格が80万円に下落したとします。
価格は下落しましたが、この国債が満期時に元本100万円+1%の金利1万円で101万円支払われることに変わりは変わりはありません。
そうなると80万円の価格で101万円なので利回りは20%となり当初の利回り(金利)より高くなるといったことが起こります。
国債の価格下落 = 国債の利回り上昇
国債の価格上昇 = 国債の利回り下落
金利と経済
短期金利と長期金利について確認したところで、次に金利がどのように経済に影響していくかをみていきましょう。
金利が高い場合と低い場合それぞれどのようなことが起こるのかみていきます。
金利が高いと、どんなことがおこるか?
- 購買意欲が高く、ものがよく売れて物価も上昇している
- 高金利=国債の金利が高くなるので、国債が投資対象として魅力的に
- リスクの高い株式よりも国債や定期預金にお金が流れやすくなる
- 国債が買われる、需要が増えて価格が上昇する=利回りが下がる(金利)
- 企業の利息負担は重くなり利益に影響、株価が下落
- お金を借りる際の利子が高くなるのでお金を借りにくくなる
- 高金利=これ以上お金を増やしたくない → 過度なインフレを抑える
金利が低いと、どんなことがおこるか?
- 購買意欲が低く、ものが売れずに物価下落している
- 低金利=国債の金利が低いので、国債が投資対象としてうまみがない
- 株式や不動産などの利回りのよい金融商品にお金が流れる
- 国債が買われない、需要が減るので価格が下落する=利回りが上がる(金利)
- 企業の利息負担も軽くなり利益がでやすい、期待が大きくなり株価が上昇
- お金を借りる際の利子が低くなるのでお金が借りやすくなる
- 低金利=お金をもっと借りてほしい、使ってほしい → 経済活性化を促す
図解:景気のサイクル

好景気も不景気もずっとは続きません。
基本的にはサイクルがあります。
国としては景気がよいときには過度のインフレを警戒し金利を上げ(金融引き締め)加熱を抑えようとし、景気が悪いと金利をさげて(金融緩和)インフレを誘うことをします。
もちろん政府の行動に市場が素直に反応するかどうかはケースバイケースです。
イールドカーブ

イールドカーブとは縦軸に利回り、横軸に債券の残存期間を取ったグラフです。
利回り曲線ともいいます。残存期間と利回りの関係性を分析できるグラフになります。
通常、長期金利は短期金利を上回って、イールド・カーブは右上がりの曲線になります。これを順イールドといいます。 傾斜が高いほど将来への景気期待が高いということになります。
逆に短期金利が長期金利を上回って、イールドカーブが右下がりの曲線となる状態を逆イールドといいます。市場は将来デフレに転じ金利がさらに下がるとみているということになります。かなり暗い見通しです。
このようにイールドカーブによって簡単に市場の将来の金利予想がみてとれます。
長期金利、短期金利と株価の過去チャート
こちらはアメリカの長短金利と株価のこれまでの推移です。
2000年~2020年の20年のデータです。


上のチャートがアメリカS&P500と米10年国債のチャート。
下のチャートがアメリカの政策金利 ” Federal Funds Rate ” です。
2008年のリーマンショックでは株価が暴落し、それに合わせて金利も下がっています。少しみにくいですが、政策金利は2008年初は3%以上あった短期金利を2008年末には0.2%以下に下げています。
長期金利は2008年以降さがり基調。株価は2013年にはリーマンショック前の株価に回復し、その後右肩上がりに上がりましたが、長期金利は横ばい。
政策金利は2016年からじりじりとあげて2019年4月には2.4%を回復しましたが、現在のコロナショックで短期間に1.5%も利下げを行い目標金利0~0.25%とかつてない低金利となっています。
しかも、この利下げが現状あまり効いておらず株は続落しているという危機的状況ですね。
日本はご存知の通りマイナス金利ですし、今後世界的に長い超低金利時代に入っていきそうですね。
株式投資にどう生かせるか
いかがだったでしょうか?
ここまで、金融市場の基礎体温と呼ばれる重要な指標である「金利」について、できるだけ細かく説明をしてきました。
株式投資においてそれぞれの銘柄のファンダメンタルズ及びテクニカル分析ももちろん大事ですが
金融相場の大きな流れをみておくことは投資を続ける中で重要になってきます。
どんな銘柄であれ金融相場の中にいるのです。相場の流れに影響を受けます。
金利を理解できれば買うべき銘柄や売るべきタイミングがわかるということはありませんが
- 政府の政策金利に注目して市場がどう反応するか勉強してみる
- 長期金利の推移、イールドカーブを確認して今後の経済の予測を立ててみる
- 金利の指標を普段から何気なく意識しておく
などすることで投資成績も上向くはず!と思ってます。
有名な米国投資家も
「プロの投資家は儲けの源泉として「金融相場が8割、業績相場が2割」という捉え方をしています。金融相場というものに対して、プロは大きな信頼を置いているわけです。裏返していえば、個人投資家は金融相場を過小評価し、業績相場を過大評価しすぎる傾向があるのです。これは悪いクセなので、金融相場と仲良くつき合う態度を早く身に付けてください。」
とおっしゃっています。
少しでも金利への理解が深まったり、経済の面白さが伝わっていたら嬉しいです。
それではまた!
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